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⽇経ウーマノミクスフォーラム「ダイバーシティ研究環境 整備と⼥性研究者の未来」が開催されました

▲会場では参加大学によるポスターセッションも実施

去る5⽉29⽇(⽉)17時〜18時30分、グランキューブ⼤阪にて開催された⽇経ウーマノミクスフォーラム「ダイバーシティ研究環境整備と⼥性研究者の未来〜国内⼥性研究者初ノーベル賞受賞者育成を⽬指して〜」(⽇経ウーマノミクス・プロジェクト実⾏委員会主催)に、⼤阪⼤学は特別協⼒機関として参加しました。

⼥性の活躍促進が進む現在、研究の現場でいまだ⼥性⽐率が極めて低いのはなぜか、どのようにすれば⼥性研究者が活躍できる環境を実現できるのか、をテーマにした今回のフォーラムには、企業や⼤学、地⽅⾃治体関係者や、スーパーサイエンスハイスクールの指定を受けた⾼校の⽣徒たちなど350名の聴衆が集まり、シスコシステムズの代表執⾏役員社⻑・鈴⽊みゆき氏によるキーノートスピーチ「ワークスタイルの多様化が⼈材を育てる」で始まりました。

国際IT企業である同社は、働きやすさと効率化を同時に進める働き⽅改⾰のひとつとしてテレワークを全社的に推奨し、ダイバーシティの推進にも着⼿しています。異なる価値観、⾔語、⾏動様式の⼈材からなるチームが創造性を発揮し、優れた問題解決策を⾒出すことができるとした上で鈴⽊⽒は、⾃らの経験から「⼈と違うということや失敗を恐れず、多様な⼈や経験に対して常にオープンであることがキャリアを積む上で役に⽴った。特に⽇本の⼥性は謙虚であっても謙遜はせず、⾃分の持っている能⼒を発揮して」とアドバイスしました。

続いて、⼤阪⼤学をはじめとする10⼤学の教員、企業3社の⼥性研究者が登壇したパネル討論「ダイバーシティ研究環境整備と⼥性研究者の未来」では、多様な研究職キャリアの実例が紹介され、⼥性研究者を増やすための対策について意⾒交換がなされました。研究者の新しい働き⽅として注⽬を集めるクロスアポイントメント(以下「クロアポ」→こちらの記事を参照)が話題にのぼると、⼤阪⼤学からパネリストとして登壇した⼤学院⻭学研究科・加藤隆史教授が、⼤学での共同研究に参画する企業研究者をクロアポで受け⼊れるようになった経緯を説明。加藤教授らとの共同研究プロジェクトで睡眠環境の開発に携わり、今年度からクロアポで⼤阪⼤学⼯学研究科の助教に着任したダイキン⼯業(株)の研究員・安本千晶氏は、「医学だけでなく情報系にまで及ぶ幅広い専⾨研究との協働など、企業内研究では届かなかった領域にアクセスできるのが⼤学での研究活動」と産学クロアポが研究⼒向上を可能にするメリットについて述べ、「このような仕組みが整ってきて、研究活動にも多様なスタイルが⽣まれてきた」近年の研究現場の状況を報告しました。

本当に好きなこと・やりたいことだから続けられた、研究現場では男⼥の性差は感じない、という実感が、様々なネガティブイメージに遮られて多くの⼈に伝わっていないことが、⼥性研究者が少ない理由なのでは、という声が多くのパネリストたちから上がりまし
た。また、育児休業などの制度は整備されていても、利⽤する側には仕事を休むことに対する不安があるという問題も指摘されました。こうした課題にパネリストたちは、まず⼥
性研究者たちがロールモデルとして次世代の理系⼥⼦たちと交流する機会を積極的に設けることが⼤切、と声を揃えました。そして出産・育児⽀援制度の整備と同時に、それらを利⽤する際の不安を相談し軽減できる上司との関係づくりや、⾃らキャリアパスを狭めることなく視野を広げる姿勢を⼤切にすること、ライフイベントも⾃らの⼒を拡げるためのチャンスと捉え、好きな研究が継続できる感謝と、憧れの研究者になるための努⼒を続けることが必要、といった研究者⾃⾝の姿勢についての意⾒も提出されました。⼥性リーダーの共同研究チームで安本氏をはじめとする多くの⼥性研究者と研究活動を共にする男性研究者であり、理系進学をめざす⼥⼦⾼校⽣の⽗親でもある加藤教授が「研究を志して取り組むことにも、やりたいと思う気持ちがあればできるということにも男⼥の違いを感じていない」と実感を込めてコメントすると、⼥性パネリストたちも頷いて共感を⽰していました。

国公⽴⼤学と私⽴⼤学、そして⺠間企業という異なった場所で研究活動をする⼥性たちが専⾨分野を超えて集まり意⾒を交わす貴重な機会となった今回のフォーラム。閉会後の参加者交流会では参加⼤学から1名ずつの⼥⼦⼤学院⽣がスピーチを⾏い、理系進路を選んだ理由や、現在の専攻内容、フォーラムで先輩研究者たちの話に触れた感想などを述べました。⼤阪⼤学からは⽣命機能研究科博⼠後期課程1年の⼭下英⾥華さんが登場。毎⽇のハードな研究⽣活に負けない明るさとユーモアのあるスピーチに、会場からは次世代の⼥性研究者への応援と期待を込めた拍⼿が贈られました。